インサートイヤホン、SPLメーターによるMCLを指標とした補聴器フィッティング
福元儀智(中国補聴器センター)、杉原三郎、友森操(山陰労災耳鼻科)
竹内裕美(鳥取大耳鼻科)
 
<はじめに>
 補聴器装用者は、出力がMCLになるように補聴器を使用しているが、
聴力域値が同等であってもMCLが異なる場合が多く、従来のオージオメ
ータ域値を指標とするフィッティングでは満足が得られるまでに頻回の
調整が必要である。今回我々は、インサートイヤホン、SPLメータで
求めたMCL、UCLが補聴器の出力音圧と直接対比できることから、補聴器
入力65dB−SPLがMCLに達することを目標にしたフィッティングを
試みた。この方法により試聴の繰り返しや再調整がほとんど不要となっ
たので、その概要を報告する。

<対象>
平成11月11日から約半年間に演者らの施設を訪れた10〜88歳の
軽度・中等度の難聴者で、今回の方法でフィッティングした補聴器は、
アナログ型77、プログラマブル型75、フルデジタル型62の、計 
214耳である。

<フィッティング方法>
1)基本的な耳鼻咽喉科診察、聴力検査などを行った。
2)インサートイヤホン(EARTONE 3A)をSPLメータ(DANAC35H)に
接続して、250HZ〜4KHZの純音域値と、500HZ〜4KHZについてバ
ンドノイズ・断続音を用いてMCL,UCLを求めた。MCLは「ちょうどききや
すい」大きさとし、UCLは「ききたくないおおきさ」とした。3)求めた
MCL、UCLは補聴器出力と直接対比できるので、各周波数の利得は65d
B−SPL入力がMCLに達するのを目標に、最大出力はUCLを超えないように
設定した。このようにプリセットした補聴器を用いて、装用域値、うる
ささのテスト、言葉のきき取りテストを行い最終的な微調整の後、装用
させた。4)補聴器の全般的な装用評価は簡単なアンケート用紙で行っ
ているが、補聴器処方、装用後から少しでも不満がある場合には、その
都度相談を行うように指導した。

<結果>
各補聴器の再調整の回数は、アナログ補聴器では77耳のうち「衝撃音
が響く」ため最大出力を下げた3耳の計3回、プログラマブル補聴器で
は75耳のうち利得を大きくした9耳、小さくした2耳の計11耳、1
1回、フルデジタル補聴器では62耳のうち利得を大きくした6耳、最
大出力を上げた1耳、滲出性中耳炎治療中で聴力変動のため利得を上下
調節した1耳4回、訴えがよくわからないため利得や周波数特性を調整
した1耳3回の計9耳、14回であった。ここで言う再調整とは、音響
特性の調整のみであるが、滲出性中耳炎治療中の症例以外は調整幅は軽
微であった。

<考察>
補聴器フィッティングとは装用者の聴覚に基づいて「周波数毎の利得を
決定すること」と「周波数毎の最大出力音圧を決定すること」である。
補聴器装用者は、@補聴器の最大力がUCLを超える場合には補聴器を
受け入れない、A補聴器に入る信号がMCLになるように利得を調整する、
Bほとんどの場合、誤音明瞭度が最高になるのはMCL付近であるとSHA
PIRO(1976)も指摘するように、演者らは第39回本学会(19
94)でMCL、UCLを指標とした補聴器フィッティングの概要を報告した。
従来広く行われている補聴器フィッティングは、オージオグラムからハー
フゲインルールまたはその改良法で周波数毎の利得を求める方法である。
最近では補聴器メーカーが独自のルールをコンピューターに内蔵されてい
るが、いずれも初期設定であり十分満足されるものではない。装用者は利
得調整器(ボリウム)のある補聴器ではこれを操作し、場面に応じて快適
聴取(MCL)を実行しているが、この状態でさらなる調整を欲するのは、
不快な大きさの出力、音質、歪みに対してである。補聴器調整で注意すべ
き点は「言葉がわからない」の訴えであるが、言葉がわかることと補聴器
適合調整とは区別されなければならない。補聴器はまず「よく聞こえるこ
とが最終目的で、補聴器を装用して即座に明瞭度が上がるのは、聞き取れ
なかった「小さな音がよく聞こえる」ようになったためである。オージオ
メータでの最高明瞭度を超えることはないが、補聴器装用によって、まず
それに近づけるようにする。補聴器を通した言葉にきき慣れ、リハビリを
することにより明瞭度の改善は可能であろう。「小さな音がよく聞こえる」
のは装用聴取域値の問題であり、演者らはその目標を45dB−SPL(フ
ィールドにおいてバンドノイズ測定)に置いている。アナログ型をはじめ
としたボリウムを持つ補聴器は、周波数特性と最大出力音圧を決定すれば、
装用者は自己のMCLに調整可能である。しかし、近年のボリウムを持たな
い補聴器では、UCLはもちろんMCL等の聴覚データに基づいて、利得等
設定をしなければならない。なぜなら聴力域値が同等であってもMCLには
(UCL同様)個人差が存在するためである。
インサートイヤホン、SPLメータは、
@オージオメータ域値音圧と互換性がある、
Aスポンジ耳せんで音漏れがなく、耳あな形補聴器挿入程度まで外耳道に挿
入可能、
B出力はカプラーで校正でき補聴器出力と同等、
C音源は純音、バンドノイズ、マイク音声、外部入力が選択でき、補聴器と
同等の機能をするので、補聴器フィティングには使用しやすいという
利点がある。
このようにフィッティングした補聴器のうち、アナログ型では装用者が自分
でボリウムをMCLに合わせるので、周波数特性と最大出力音圧を決定して
おけば、再調整が少ないのは当然である。ボリウムを持たない補聴器におい
ても特別な症例以外は1回の微調整で終わり、約87%には再調整が不要で
あった。このことは演者らの補聴器フィッティング法が聴覚障害者の補聴に、
より早く正確に寄与することができ、頻回の補聴器の貸出しや試聴、再調整の
時間を大幅に短縮したと考える。

<参考文献>

大沢広秀他:MCLを指標とした補聴器フィッティング。
Audiol Jpn 37:385-386.1994
SHAPIRO,I.:Hearing Aid Fitting by Prescription.
Audiology 15:163-173.1976