補聴器の活用程度と調整状態について
○福原隆宏1)、福元儀智2)、硲田猛真1)、長谷川賢作1)、北野博也1)
1) 鳥取大学医学部感覚運動医学講座耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野
2) 中国補聴器センター
 
[はじめに]
 補聴器が有効に活用されるためには、どのような条件が必要かについては、現在のところ明確には判っていない。
 中国補聴器センターでは補聴器販売後に購入者の装用状態についてのアンケートを行っている。今回、これをもとに、補聴器販売段階での様々な条件が補聴器の有効活用にどのように影響しているかを検討した。


[対象と方法]
 平成15年5月から平成16年3月までに中国補聴器センターにて補聴器を購入したものに対し、装用状態のアンケートはがきを送付し、解答のあった48例と、平成15年10月以降分については電話アンケートを行った44例、計92例を対象とした。
 アンケート項目には、1日あたりの補聴器の使用時間、を含めており、1日あたりの補聴器の使用時間が長い装用者は補聴器を有効に活用できていると考えた。回答から1日8時間以上使用している群(活用群)と数時間以下しか使用していない群(低活用群)とに分け、販売時のフィッティングデータを参照し、差がないか検討した。電話アンケートでは表1の10項目を質問した。いずれも三者択一とした。
            
表1 アンケート内容
ABC
T補聴器の着脱できるなんとかできるできない
Uボリュームの操作できるなんとかできるできない
V電池の出し入れできるなんとかできるできない
W装着感快適少し気になる痛くなる
X大きな音ひびかないすこしひびくひびく
Y1対1の言葉よくわかるまあわかるわからない
Z数人で話す言葉よくわかるまあわかるわからない
[自分の声のこもりこもらない少しこもるガマンできない
\テレビよくわかるまあわかるわからない
]1日の使用時間8時間以上数時間必要なときだけ


[結果]
 対象となった症例の裸耳聴力の平均と分布を表2に示す。低活用群のほうが全体的に難聴の程度が軽い傾向が見られた。聴力の区分を見ると、60〜79.9dBの範囲は活用群と低活用群の比率がほぼ一定しており、また、症例数も比較的多いことがわかる。そこで、以下の検討では、症例全体についてと、聴力レベルを合わせる目的で、60〜79.9dBの聴力範囲の症例を抽出したものとで行った。ただし、追加アンケートは症例が少ないため、50から79.9dBの聴力範囲の症例を抽出した。
 活用群と低活用群におけるフィッティング時の語音明瞭度、装用利得、装用閾値、および各群のアナログ補聴器の比率を表3に示す。症例全体では装用閾値は低活用群で有意に低値となっていた。しかし、抽出症例では装用閾値の差は有意ではなくなっていた。裸耳および装用耳の明瞭度、装用利得には有意差は見られなかった。また、抽出症例では活用群で有意にデジタル補聴器の装用者の比率が高くなっていた。
 各群の追加アンケート結果を表4に示す。両群間に開きが見られたのは質問[のこもり感のみであり、抽出症例では有意に低活用群のこもり感BまたはCの率が高かった。そこで、抽出奨励に置いて、こもり間とフィッティング時の明瞭度、装用閾値を調べた。裸耳での語音明瞭度は、こもり感Aでは平均17%、BまたはCでは平均41%で、有意にAの裸耳語音明瞭度が低かった。

表2 対象
活用群低活用群
平均聴力(SD)68.0(12.7)61.7(9.7)
(4分法、dB )
聴力活用群低活用群
50dB未満
50〜59.911
60〜69.93314
70〜79.910
70〜79.910
80〜89.9
90dB以上


表3 フィッティング時の差異
症例全体60〜79.9dB
活用群低活用群活用群低活用群
肉声約60dB語音明瞭度(裸耳)24%28%26%27%
装用閾値(4分法)45.0dB42.2dB45.0dB43.7dB
装用利得22.5dB19.5dB21.2dB21.7dB
肉声約60dB語音明瞭度(装用下)87%88%88%88%
装用下明瞭度80%以上の比率81%86%82%89%
アナログ補聴器の比率70%79%70%100%


表4 追加アンケート結果
症例全体50〜79.9dB
TUVWXYZ[\WXY Z[\
活用群A2712272122151023191616121915
B1110
C
A%9610096757954368268767657389071
低活用群A1514131210101211
B1010
C
A%9410088817563315663807360275360


[考察]
 今回の検討の結果、フィッティングによる差異よりも、裸耳聴力ないし、裸耳での約60dBの語音明瞭度が補聴器の活用程度に影響する可能性がうかがわれた。今後はこのような条件を合わせた上で、フィッティングの良否を考える必要があることが考えられる。