補聴器装用者の慣れに関する検討(補聴器経験者と未経験者のアンケート調査)
○福元儀智1)、杉原三郎2)
1)中国補聴器センター、2)山陰労災病院
 
[目標]
補聴器フィッティングはここの難聴者に最良の性能を提供することであり、完了するまでの時間は短いことが望まれる。補聴器フィッティングは初期調整後使いながら再調整し使いやすい状態にすることであるが、装用者には慣れる期間も必要である。しかしながら、どのような項目に慣れるのか、どのような方法で慣れていくのか、不明な点が多い。そこで補聴器購入者にアンケート調査を行い補聴器経験の有無による差を求め、差の大きい項目は慣れにくいと考えカウンセリングに活用できないか検討した。

[対象と方法]
2,006年1月から3月末までに補聴器を処方して、アンケートに回答があった挿耳形購入者93人103耳であり、年齢は21〜88歳、男性35女性58名であった。聴力は36dBから85dBで平均は57dBであった。103耳を補聴器経験者(以下無群)38人40耳と補聴器未経験者(以下無群)55人63耳に分類した。補聴器装用後2週間後にアンケートを送り、表に示す項目について得た回答を検討した。

表 アンケート項目と評価
項目評価
補聴器の着脱できるなんとかできるできない
ボリュームの操作できるなんとかできるできない
電池の出し入れできるなんとかできるできない
装着感快適少し気になる痛くなる
大きな音ひびかない少しひびくひびく
1対1の言葉よくわかるまあわかるわからない
数人で話す言葉よくわかるまあわかるわからない
自分の声のこもりこもらない少しこもるこもる
テレビよくわかるまあわかるわからない
101日の使用時間8時間以上数時間必要なときだけ
11慣れる時間3日1週間2週間



[結果]
 否定的評価および無回答を除いた肯定的な評価の比率を求め、有群と無群について図に示した。有群と無群とで肯定的評価の比率の差が大きかったのは2:ボリュームの操作、5:大きな音、8:自分の声のこもり、10:1日の使用時間、11:慣れる時間であった。

図 補聴器経験の有無による項目別肯定的評価


[考察]
両群において装用者の2週間後の評価は肯定的評価が高かったが、ボリューム操作、大きな音、自声のこもり、1日の使用時間、慣れる期間に大きな差が認められた。2のボリュームの操作に関しては両群とも約60%はボリューム無しの補聴器を使用しており、残りの40%の回答結果である。有群と無群との差が最も大きかった。ボリュームに関しては形状が小さくて操作しにくいことや環境によって調整が難しいことが含まれると考えられる。いずれにしてもボリューム無しの5の大きな音、8の自分の声のこもりに関しては両群の差がかなり大きかった。大きな音でひどく不快となる場合を除き、安易に利得を下げることなく、大きい音でもそれなりに自然界の大きい音と認識するようアドバイスしている。自分の声のこもりも同様に、慣れる可能性を説明し、受容範囲での使用を勧めている。10,11の項目に関しては1から9までの全項目の評価の結果と考えられる。11の慣れる期間に関しては有群では大多数が1週間以内であった。一方、無群では3日、1週間、2週間がほぼ同数であったので、前述の項目2,5,8を装用開始時のアドバイスの重点目標とすれば慣れる期間を短縮できると考えられる。両群での差が少ない1,3,4,6,7,9の項目は無群でも簡単な説明を行えば、比較的慣れやすいものと考えられる。


[文献]
福元儀智他:インサートイヤホンSPLメータによるMCLを指標とした補聴器フィッティング Audiology Japan 44,95〜100,2001