MCLを指標としたフィッティングのための微小音圧検知能の検討−その1
○福元儀智1)杉原三郎2)
1) 中国補聴器センター
2) 山陰労災病院

 

[目的]
我々は過去の本学会及び本学会誌で、MCLを指標とした補聴器フィッティング法について報告した。
補聴器特性の設定についてSHAPIROは原則の一つとして「語音弁別能が最高になるのは、その人のMCLまたはそれに近いところ」と述べている。音圧が小さく言葉が理解しにくい時、音圧を大きくすると理解度が向上するが、語音弁別が良くなるには微小な音圧の変化を検知する能力にも関係があると考えられる。
今回は閾値から不快値のレベルにおいて微小音圧検知能の測定を試み、SHAPIROの原則と我々の補聴器フィッティング法の妥当性を検討したのでその概要を報告する。

[対象と方法]
対象は正常聴力3名6耳、高域に難聴が認められる1名2耳の合計4名8耳である。年齢は聴力正常者2名が30歳台、1名は40歳台、難聴のある1名は60歳台である。まず閾値から不快値までの感じる音の大きさをLoudness Rating(LR)とし5段階に分けた。その測定は2Hzの断続音を用いて1:小さい、2:少し小さい、3:ちょうど良い(MCL)、4:少し大きい、5:大きい(UCL)としてその音圧を求めた。閾値は0とした。オージオメータはダナジャパン製DANAC−30を用いた。微小音圧検知率はオージオメータ内臓のSISI機能を利用した。周波数は1kHzと4kHz、音圧変化分は1dB/5秒、提示回数は20回とし、各LRについて測定した。

[結果]
4症例の聴力図を図1に示した。図2に4名8耳のLRと音圧およびそれぞれのLRに対応する微小音圧検知率を示した。LRは症例1,2では音圧とほぼ直線的に増大し、症例3,4では急な増加曲線を示した。特に症例4の4kHzでこの傾向が著明であった。図3に全症例のLRに対応する微小音圧検知率はLRが大きくなるに従い大きくなり、LR:1では5〜25%、LR:2では35〜75%、LR:3ではいずれも80%以上であった。難聴のある症例4はLR:1において95%を示した。

図1 症例のオージオグラム 図3 微小音圧検知率


図2 4症例のLR・検知率
          


[考察]
 微小音圧検知測定は練習を含め125秒かかる上、LR:4以上では音が大きすぎるための不快により半数が測定できなかった。症例1〜3では微小音圧感知率はLRが小さい場合は小さく、LR:3では80%を超えた。このことより小さい音声では会話了解が難しく「MCL付近で語音弁別能が最高になる」というSHAPIROの原則に合致し、我々が報告したMCLを指標として利得を計算・設定する補聴器フィッティング法は合理的であると考えられる。

[参考文献]
1)福元儀智・杉原三郎他:インサートイヤホン・SPLメータによるMCLを指標とした補聴器フィッティング。Audiology Japan 44 95〜100 2001
2)SHAPIRO T:Hearing Aid Fitting by Prescription Audiology 15 163〜173 1976