小型イヤホンによって測定した最小可聴値と補聴器の特性との関係
十時 晃(日本聾話学校)
 
聴覚障害児の教育に補聴器は欠かせないものであり、その適応、選別に当って補
聴器装用による最小可聴値の測定をすることがあるが、その結果をオージオグラ
ムと比較すると、オージオグラムは6ccカプラーで更正された外当の受話器で
測られた値であり、一方は補聴器のマイク前面での音圧であり、たとえ換等して
も比較できない。本来は音場での裸耳の最小可聴値と、同一音場での補聴器装用
時の最小可聴値とを比較すべきであるが、これにはかなりよく処理された吸防音
室が必要である。また補聴器の特性あるいは利得という点から考えてみると、補
聴器の入力は音場での音圧であり、出力は2ccカプラー内での音圧であるので
被験者の2ccカプラーで更正された小型イヤホンによる最小可聴値を、補聴器
装用時の最小可聴値と比較し、補聴器の利得および特性との関係を検討してみた
図1.
正常耳における小型のイヤホンと外当で
○受話器による最小可聴域・外当で受話
器によるもの
×小型のイヤホンによるもの実線は、平
均値を結んだ線破線は、J.I.S.オ
ーダオメーター○を結んだ線。
 

T.正常耳における小型イヤホンと
外当て受話器による最小可聴値被験
者:23〜31歳の聴力正常な男子
で聴取訓練されているもの6名、た
だし1名は耳鳴あり、その者の15
00Hzは除いた測定結:図1に示す
ようであった。
U.小型イヤホンで測定した最小可
聴値と補聴器装用時の最小可聴値被
験者:日本聾話学校中学部生徒16
名(29耳)測定条件:オージオメ
ーターは補聴器用小型イヤホンを付
し、2ccカプラーで各周波数とも
174dbを0とするように更正し
測定は標準オージオメトリーと同様
にした。補聴器装用時の測定は防音
箱にスピーカーを取付け、補聴器を
入れ、マイク前面での音圧の最小可
聴値を測った。補聴器は各自の使用
状態のセッティングとした。いずれ
の場合も耳孔挿入部は、各自個人用
のイヤモールドを用いた。測定結果
:図2は測定結果の一例である。図
3は図2の各周波数における補聴器
によらない時の値から、補聴器を装
用した時の値を引いた値と、補聴器
の周波数特性とを比較したものであ
る。この例では、125、250Hz
で補聴器の利得よりも5db多く、
500〜1500Hzでよく一致している。2000,3000Hzではそれぞれ15dB、25dB、よくなっている。被験耳各々について、補聴器装用時との差と補聴器の利得とを比較すると、

図2. 小型イヤホンによる最小可聴値と補聴機装用時の最小可聴値
○---○ 小型イヤホンによる
△---△ 補聴器装用時

図 3.実線:補聴器の特性
    ○---○小型イヤホンによる最小可聴値から
    補聴器装用時の最小可聴値を引いた値

1.全く一致しているもの  1例
2.2周波数以内で5dBの差のあるもの 1例
3.3周波数以上で5dBの差のあるもの 4例
4.2周波数以内で10dBの差のあるもの  9例
5.3周波数以上で10dBの差のあるもの  3例
6.2周波数以内で15dBの差のあるもの 7例
7.3周波数以上で15dBの差のあるもの  0例
8.2周波数以内で20dB以上の差のあるもの  3例
9.3周波数以上で20dB以上の差のあるもの  1例
であった。10dB以上の差が2周波数以内で他はすべて差が5dB以下であった
ものは、25例となり、10db以上の差が3周波数以上になるものは4例とな
る。各周波数における差の頻度数は表1のようであり、10dB以上の差でみる
と125Hz、250Hz、1000Hzにその差の頻度が多く見られる。また補聴器
の利得の方が大きいものは、小さいものに比べ約2倍であった。考案:補聴器の
利得=(レシーバーの2ccカプラー内の音圧)−(マイク面での音圧)であり、
小型レシーバーによる最小可聴値もまた2ccカプラー内の音圧で表わされ、補
聴器装用時の最小可聴値はマイク面での音圧で表されるから、小型レシーバーに
よって測定された最小可聴値から補聴器の利得を引けば、補聴器装用時の最小可
聴値が等出される筈である。測定結果による差異が何によるかは詳でないが、一
つの理由としては補聴器の歪によるものではないかと考えられる。あるいは、測
定に当って各周波数毎に交互に測定したわけではないので測定中の疲労による測
定値の不安定が考えられなくもない。全体で見て差が5dB以内は71%である
が、10dBまでを許容すれば90%となる。本実験における測定は、日本聾話
学校の音響技術職員・中川永弘君が、十時の指導のもとに、
主としてこれに当った。
表1.各周波数における差の頻度数
差\頻度数 125Hz 250Hz 500Hz 800Hz 1KHz 1.5KHz 2KHz 3KHz
0dB 10 11 10 62
5dB 10 12 12 10 73
10dB 38
15dB       11
20dB            
25dB        
20 28 29 29 28 27 22 191