Band Noiseによる補聴器Fittingと言語聴取成績について
槙野博規・友森操(山陰労災病院)・福元儀智(中国補聴器センター)
 
私達は補聴器の処方に際して、純音またはBand Noiseの
最良聴取域値を測定して、装用補聴器の諸条件を決定し
た。(1972年2月 補聴器勉強会 於神戸)最近この様に
して装用させた補聴器の日常生活上の実用効果を追跡検
討するために、装用後相当期間を経過して装用に習熟し
た症例のうち数例について語明瞭度の検討を行ったので
報告した。
検査方法:防音室内で、
1.純音オージオグラムの作製 
2.純音またはBand Noise(Filter周波数 表1)聴取
域値測定は裸耳でスピーカー法で実施した。測定系は図
1に示した。Band NoiseはAA−34発生Band Noiseを
さらにFilterにかけた。
3.補聴器の諸条件を設定し装用させ、音量は不快域値
の直下に調節、再びBand Noiseの聴取域値を5points
で測定した。4.聴取域値がAudiogramの30〜40dB
以内に入る様に調節が望ましい。5.不快感がなければ
装用を決定した。6.語音明瞭度の測定は補聴器が通常
の装用状態であることを確認の後、67式リストを聴取を
させて行った。次に裸耳で再び同リストを聴取させて明
瞭度曲線を求めた。8.正常成人2名、小児2名の明瞭
度曲線も記録した。
症例:症例1 11歳男子、初診1976年6月、主訴 発音
障害、高音漸傾型難聴を認め、1972年12月、補聴器装用
の上言語訓練開始。1974年両耳補聴器装用 1975年8月高
域補償型補聴器に変更。1976年 8月、図2に示す様な純
音域値×○、両耳Band Noise聴取域値▲-▲、両耳補聴
器装用Band Noise聴取域値○▲○▲を示した。補聴器装
用期間は5年5ヶ月、言語訓練実施し、普通小学校在学中
であり成績は良好。 
症例2 11歳男子、初診1972年、サ行カ行障害 高音
漸傾難聴あり。1974年9月より補聴器装用、1976年8月聴
力像は図3の様である。装用期間は1年11ヶ月である。
症例3 9歳男子、1975年 1月初診、発音障害、高音漸
傾型難聴、直ちに補聴器装用、言語訓練実施、1976年 8
月、聴力像図4の様である。1年8ヶ月の装用期間がある。
発音の矯正良好である。以上3例ともに高音漸傾型難聴
例であり、1976年 8月現在、補聴器装用し、言語の矯正
訓練を受けた症例で通常の小学校に在学中である。本年
7月、8月に語音明瞭度を判定した。
検査成績 
全症例及び健康人4例の語音明量度曲線は図5に示した。
▲−▲は裸耳、○×○・は一側耳、○▲は両耳の補聴器
装用時のScoreを示す。裸耳のScoreは3例ともに40〜
60%まで急速な立ち上がりを示し、以後傾斜が緩とな
り、最高明瞭度は80〜100%に達している。これら
の症例に図2・3・4の様にBand Noiseで調節した補聴
器を装用させて、語音聴取検査を行った結果が図5の中
央○×○・○▲で表示した曲線である。 裸耳のScoreに
平行して曲線の立ち上がりがみられたが、 このScore群
で は3例ともに30から60dBの範囲で10dB程度の
ばらつきの中に入って上昇していた。70〜80%の間
で曲線の傾斜が緩やかとなり、2例は60dBで最高明瞭
度が得られ、1例は裸耳、装用時ともに最高明寮度は同
じdB、同じScoreを示した。しかし、この例でも60d
BにおけるScoreの差は装用時が30%も高く計測された。
左端の曲線群は健康人の明瞭度を示す。
考案
 補聴器をBand Noiseを用いて調整装用させたのち、
装用に習熟してから語音明瞭度を測定して、装用時の耳
からの情報の取り入れに及す効果を推測してみたいと考
えた。私達の方法による補聴器の装用ののち、500,
1000,2000Hzの3pointsのBand Noiseの聴取域
値が裸耳のそれに比べて20〜25dB程度の改善を示し
ているが、語音明瞭度曲線の左方への移動も大体20〜





25dB程度であった。最良明瞭度の上昇、70%程度で曲線の傾斜の低下する
曲折点の上昇もあったこと、会話音域である50dB、60dBでの明瞭度の大
きな改善は、私達の補聴器装用が妥当に行われていた事を示すものと考えた。
他方では補聴器での補聴を可能な限り試みても現在する補聴器では正常人の明
瞭度に遥かに及ばないハンディキャップが難聴者に存在することが明確に示さ
れた。補聴器の特性の差による明瞭度の相違、高度先天性難聴児の補聴器装用
の諸問題、装用後の訓練効果の検討、語音明瞭度検査の補聴器装用時の意義等
について問題のある事が提示された。