連続周波数自記方式を用いた断続音による補聴効果測定の試み
槙野博規(山陰労災病院)・友森操( 同 )
福元儀智(中国補聴器センター)・福田真由美(鳥大耳鼻科)
 
補聴器装用効果測定の一法として狭帯域雑音によるものを既に発表(1976
年本総会)したが、今回は連続周波数自記方式を用いた断続音を与えて補
聴効果の測定を試みた。
(1)狭帯域雑音C1〜C5 5ポイント法による(以下BN法と略す)測定値
      と、本法による測定値とを比較検討した。
(2)装用補聴器利得特性と装用効果(装用特性)との関係を検討した。
(3)装用補聴器による不快値の変化を検討した。

実験方法:BN法と本法の実験装置をブロックダイヤグラムで示すと図1の
様である。

実験方法の検討
正常者7名の域値を決定し加えて両耳聴取と片耳聴取の比較、連続音、断
続音(2Hz、4Hz)の比較、域値上音圧の測定と定在波の影響を検討し、
上記設定条件を求めた。


結果と考察
1. 両耳伝音性難聴A氏の例

両耳に補聴器を使用している1例の裸耳、
両耳装用及び左右それぞれについて域値を
測定した。(図2)両耳装用特性を見ると、
各音域において左右各々の装用効果の良い
方を反映しており、装用効果は30〜40
dBあり特に1〜2kHzにおいては正常者域
値に近い値を示している。

2. BN法と本法との域値比較

難聴者3名の両裸耳域値及び装用耳5例の
域値をそれぞれBN法、本法で測定し、その
差を求めてみた。(BN法域値)−(本法域
値)=差  図3は、250〜4000Hz
についてその差を示す。図3によればいず
れもBN法域値がよく出ており、特に1kHz
ではその差が大きくなった。この差の原因
としてBN法では音を繰り返し呈示して域値
を求めるのに対し、本法では繰り返しがな
く周波数も変化するため域値が幅をもった
状態となったと考えられる。

3. 補聴器利得と装用利得(効果)の関係

被験者に数種類の補聴器を装用させ、音量
調整器は本人がききやすい状態に設置した。
この状態で装用域値を測定し、裸耳域値と
の差を求め装用利得とした。補聴器をこの
状態に保ち補聴器特性測定装置にかけ、補
聴器利得を測定した。(入力音圧は70dBSP
Lとした)図4は、箱型補聴器装用例を示す。
図5は、箱型補聴器2種3特性、耳かけ型
補聴器2種2特性について、補聴器利得か
ら装用利得を引いたものを示す。マイナス
側は補聴器利得より装用利得が大きいこと
を示す。図4では、補聴器利得特性が平坦
であっても装用利得はかなり変動があり、
特に1.5〜4kHzで著名であった。図5
においては、箱型補聴器と耳かけ型補聴器
とでは低域にて差が大きいこたが認められた。

4. 補聴器による不快値の変化

図6は、同一補聴器のリミッター(LIM)
及びコンプレッション(COMP)を変化させ、
それぞれ装用域値と不快域値を測定したも
のである。装用域値にはほとんど差はみら
れないが、不快域値では特に低音域で10
dB程度の差が認められた。




結論

従来BN法で装用効果の判定を行なってきたが、その測定ポイント間の変化を知るため、
また補聴器の利得特性との関係を検討するため本法を試みた。両測定法による域値の
差(図3)は、若干あったが、本法ではBN法ではみられないポイント間の装用効果の
変化も測定された。補聴器の利得特性との関係は必ずしも一致せず、耳かけ型におい
ては、低音域が補聴器利得より15dB程度悪く、800Hz付近では両者ともほぼ一致
し、2〜3kHzでは両者とも15dB程度悪く、4kHz以上では装用利得の方がかなり
良くなった。この事より補聴器特性より装用効果を推測するのはかなり困難であり、
今後多くの症例による検討が必要と思われた。不快値の変化は、LIM,COMP等の使用で
音響利得に変化の少ないものでは、域値の変動を伴なうことなく不快値を上げる事が
できるが、それも1kHzぐらいまでであった。なお、正常者群の不快値と比較したが、
難聴者では補聴器を装用してもなおかつ損失があるため、正常者群より若干音圧の大
きい所で不快となっている様であった。ただし不快値測定では不快であることの認識
に個人差がかなり認められた。