SPLメータによる不快域値と補聴器最大出力音圧設定との関係について
槙野博規・友森操(山陰労災病院耳鼻科)・福元儀智(中国補聴器センター)
 
< はじめに >
補聴器装用時に過大音入力による不快を防ぐためには、その補聴器の最大
出力音圧を設定する必要がある。しかしながら不快域値の測定をオージオ
メータで行う場合、難聴者によっては測定が困難なこともあり、また補聴
器を装用させながらスピーカ等で入力しながらその最大出力を調整するこ
とは、設備や調整時間などに制約があり、一般に実施するにはやや困難な
面がある。我々はSPLメータを用いて連続音による不快域値を求め、補聴器の
最大出力音圧の設定に用いてきたが、装用者の許容できる補聴器最大出力
音圧はこの不快域値より大きくなる例をしばしば経験した。補聴器の出力
音圧は聴取域値上、大きいほど望ましく、そこで許容できる最大出力音圧
に近い不快域値の測定にパルス音を用いて行う方法を試み、連続音のそれ
と比較検討した。

< 方法 >
1. SPLメータ(DANAC 35H)にパルス発生器を追加し、連続音およびパル
  ス音を用いて上昇法で不快域値を求めた。イヤホンはSM-68−Wであった。
2. 測定周波数は250,500,1000,2000,3000 および4000Hzで最大音圧
  は130dB SPLであった。
3. パルスは持続時間50ms、繰返時間500msに設定した。
4.補聴器は被検者が装用しているものを用い、その最大出力音圧を装用
  耳で不快にならないよう確認しながら、
  出力音圧が最大になるよう調整した。
5. その状態で補聴器の入出力関係を補聴器測定器(Phonlk EAR HC2100,
  HC2200,PE2700)で記録した。
6. 出力音圧の飽和状態は1000Hzにおける入力音圧10dBの増加に
  対し、出力音圧の増加が3dB以内と仮定した。



< 症例および結果 >
 症例を図1〜図6に示し
た。図は聴取域値および不
快域値(■:連続音 ▲:
パルス音)ならびに補聴器
特性を示す。図1および図
2は聴取域値と不快域値と
の差が非常に小さく、補聴
器適合が難しい例であるが
補聴器の最大出力音圧を連
続音による不快域値より大
きいパルス音による不快域
値まで大きくした例である。
図3および図4は同一の症
例で、図3に示す最大出力
音圧の状態では不快を示さ
ないが、図4に示す状態で
は不快との訴えをした。図
5の症例は6才10月のろ
う学校幼児であるが、パル
ス音における不快域値以下
に最大出力音を調整した例
である。図6の症例は8才
の普通児であるが、補聴器
による不快となる最大出力
音圧と、測定した不快域値
との差が大きすぎた例であ
る。この症例は装用時にう
るさいと訴えたので、最大
出力音圧を小さくしたが、
今後不快域値の測定と補聴
器の調整の要があると考え
る。

< まとめ >
不快域値の測定は被検者に
とってなじみが少なく、そ
の意味の取り方によっては
大幅にその値が変化する例
もあった。
しかしながら聴取域値と不
快となる音圧の差が小さい
場合、補聴器をより有効に
使用するためには、その出
力音圧を不快となる上限ま
で出すように調整すること
は必要である。今回我々は
SPLメータを用いて連続音とパ
ルス音について不快域値を
測定し、補聴器最大出力音
圧は連続音による不快域値
をこえても、パルス音によ
る不快域値をこえなければ
その補聴器は十分使用され
得るこを認めた。連続音と
パルス音による不快域値の差は、およそ5〜10dBであり、
大きな値ではなかったが、パルス音を用いて求めた不快域値は、
補聴器の最大出力音圧を大きくすることに有効に活用
できるものと考えた。