補聴器装用耳における不快域値の検討
槙野博規・友森操(山陰労災病院耳鼻科)・
杉原三郎(鳥大耳鼻科)・福元儀智(中国補聴器センター)
 

< はじめに >
補聴器装用にあたり、その最大出力音圧は少なくとも装用時に不快でない
よう調整されなくてはならない。補聴器の最大出力音圧を確定する方法は
いまだ明確化せれていない。不快域値を求める方法としてオージオメータ、
SPLメータがある。オージオメータでは測定不能であったり、測定されてもそ
の値と補聴器出力音圧との対比が直接にはできない。2mlカプラで較正
されたSPLメータで測定された不快域値は、2mlカプラで測定された補聴器
出力音圧とそのまま対比し利用できる利点がある。私たちはSPLメータの短音
で測定した不快域値で補聴器の最大出力音圧を調整しているが、快適に使
用されかつ、ダイナミックレンジの拡大も認めている。なお域地測定もSP
Lを用い、 その域値は不快域値と直接対比できかつ、補聴器調整に有効に
活用している。

< 目的 >
203耳の不快域値を求めその実態を把握し、補聴器最大出力音圧表示値
との関係を検討した。

< 方法 >
1.SPLメータ(DANAC35H)を用いて連続音で域値、短音で不快域値を求めた。
2.測定周波数は0.5、1,2kHz、短音は持続時間50ms、繰返時
  間500ms。
3.対象耳は補聴器装用183名203耳、年齢層は18歳までの幼少年
  25名、60歳までの青壮年62名、61歳以上の老年116名。
4.補聴器メーカー11社のカタログにより耳掛型補聴器の最大出力音圧
  および出力制限について調べた。
< 結果 >
・203耳について求めた1kHzにおける域値をA,B,C,DおよびEの5群に
  分類した。
・A群は1kHzにおける域値が55dB以下、B群は60および65dB、C
  群は70および75dB、D群は80から95dB、E群は100dB以上とした。
・各群の耳数はそれぞれ37,57,56,32および21耳であった。
・各群の域値に対する不快域値を図1に示した。
・図2に203耳の1kHzにおける不快域値の分布を示した。
・11社の補聴器のカタログ記載機種(耳掛型)は140種類あり、出力
  調整器のあるものは119種であり、無いものは21種であった。
・最大出力音圧は120dB以上のものが133種で大部分を占めており、
  100dB未満のものは皆無であった。
・最大出力音圧の調整器のあるものも、調整範囲の明示したものは無かった。

< 考察 >
・補聴器を必要とした203耳では、図1に示したように1kHzにおける
  域値が40dBより120dBにおよぶ広範囲であった。
・域値が小さい耳ほど不快域値の分布範囲が広く、域値が大きいほど不
  快域値の分布範囲は狭かった。ダイナミックレンジとして考えれば域値
  が上昇するに従い狭くみられた。
・D,E群ではダイナミックレンジが非常に狭く、補聴器の調整に慎重さ
  が必要であった。
・図2によれば不快域値120dB以上の耳が約50%、不快域値110
  dB以下のものが約30%みられた。
・この30%の症例の補聴器の選択と調整にあたっては、メーカーのカ
  タログ表示からは最大出力音圧の下限が不明であり、非常に不都合であった。

文献 槙野博規他;SPLメータによる不快域値と補聴器最大出力音圧設定
との関係について