カナル形補聴器の使用経験
友森操・杉原三郎・槙野博規(山陰労災病院耳鼻科)・
福元儀智(中国補聴器センター)
 
< はじめに >
最近オーダーメイド式のカナル形補聴器を希望する難聴者が増加している。
最近1年間に当院でこの形の補聴器を製作したものは30耳であった。こ
のうち9名、11耳については本人の装用満足度をアンケートによって調
査し、装用耳の聴力および補聴器装用状態での特性を測定し、これらの結
果からカナル形補聴器の装用上の実態を検討した。

< 症例 >
症例は20〜60歳成人9名(男8、女、1)の11耳で、軽度ないし中
程度の感音性難聴を持つものであった。

< 方法 >
○ オーダーメイド式カナル形補聴器の使用者に装用感のアンケート調査
  を行った。
○ 9症例について標準純音聴力、SPLメータによる最小可聴域値、不快域値、
  音場バンドノイズによる域値を測定し、さらにCCI−10のワーブルト
  ンを用いて実耳音響利得特性を求めた。
○ 装用状態での補聴器の音響利得特性および最大出力音圧特性を2ml
  カプラーを用いて計測した。
< 装置 >
オージオメータ:DANAC30、SPLメータ:DANAC35H、音場測定装置:
リオン特注,CCI−10、補聴器測定装置:PONIC EAR HC2000。
< 成績1、アンケート調査 >
アンケート調査はきこえの評価、装用感評価について行った。これから総
合評価も行い、各症例の平均聴力レベルおよび音場装用域値を表1に示し
た。図1に11耳の音場装用域値を図示した。

< 成績2、不快域値と最大出力音圧 >
全症例において2mlカプラによる補聴器の最大出力音圧は、SPLメータの短
音を用いて求めた不快値をこえなかった。

< 成績3、2mlカプラ利得と実耳利得との比較 >
補聴器の装用状態で実耳利得特性をCCI−10(70dB,ワープルトン)で
求め、さらに2mlカプラで利得特性を求めた。図2は低域に差があった
もの(2例)、図3は高域に差があったもの(7耳)を示す。ほぼ一致し
たものは2耳であった。

< 考察 >
1)オーダーメイド式カナル形補聴器を使用している9名11耳について
調査した。5例7耳についてはかなり満足度が高く、3例3耳については
軽度難聴度の理由でほぼ満足であった。1例については不満があった。こ
の症例はオージオグラムおよび装用域値を図4に示す。図5は補聴器装用
状態の実耳利得特性と2mlカプラ利得特性を示す。両図とも中音域での
利得が十分でなく、アンケート調査でも高音がキンキンして耳ざわりであ
るとの不満があり、再製作することになった。 
2)特性、耳形ともオーダーメイド式といわれるカナル形補聴器であるが、
使用者の装用感に多少とも不満があるときは、装用域値、補聴器特性等を
測定し、不満の原因を検討する必要が認められた。 
3)カナル形補聴器の防音箱における利得特性測定値の変動について
補聴器の諸測定は無響室にて行うことが理想であるが、一般的には便宜上、
防音箱で行われることが多い。カナル形補聴器を防音箱で測定する場合、
補聴器を置く状態の違いにより測定値が異なることが認められた。図6は
補聴器を置く状態を変えて利得特性を測定したものを示す。カナル形補聴
器の特性を防音箱で測定する場合、この点にも留意すべきであると考えた。
表 1 症例とアンケート結果
症例 平均聴力 dB 装用域値 dB きこえ 装用感 総合
1 左 58 30
  右 46 25
2 左 44 33
  右 45 29
3 左 46 29
4 左 69 45
5 右 54 39
6 右 66 43
7 左 29 27
8 右 50 25
9 左 46 35 × -
○良い △やや良い ×悪い