カナル形補聴器の使用経験 その3
杉原三郎・槙野博規・友森操(山陰労災病院耳鼻咽喉科)・
福元儀智(中国補聴器センター)
 
( はじめに )
昭和61年から2年間に我々の施設で装用を試みたカナル形補聴器の数は
209耳であった。この209耳について追跡調査を行ったところ、66
耳に延べ95件の装用時の問題点が認められた。第32回木学会において、
問題点を特性上、構造上、装用上、実用上のトラブルに分類して検討し、
カナル形補聴器の処方にあたっては使用知識を十分に装用者に教育する必
要があること、トラブルの申し出については詳細に聴取し、できるだけ装
用者が満足のいくまでfollow upと after careが必要であることを報告
した。今回は昭和63年1月から平成1年7月までに装用を試みたカナル
形補聴器322耳について同様の調査を行ったのでその概要を報告する。

( 症例 )
症例は10歳から86歳で60歳以上が64.5%であり、男女差はなか
った。装用耳は左150耳、右164耳、両4耳の計322耳であった。

( 結果および考察 )

1.特性上のトラブル (6件)
補聴器の装用初期に設定した音響特性は補聴の目的に適合したものであっ
たが、装用開始後に特性の変化が認められたもので、感度不良のためレシ
ーバを交換したものが1件、音切れのためアンプ交換4件、リード線交換
1件であった。原因の詳細は不明であったが電気回路への湿度、温度の影
響と考えられた。したがって装用者に保守点検法を十分に教育する必要が
あるとともに、完全防水型カナル形補聴器の出現を望みたい。

2.構造上のトラブル (9件)
カナル形補聴器の構造に起因すると考えられる故障で、前回の調査では導
音管やベント孔の目づまりが大多数で、他に内部ハウリング、電池ボック
スの故障、利得調整器の不良、フェイスプレートの外れなどがあった。
導音管類の目づまりは入口部にフィルターを設置することにより完全に防
止することができた。
イヤシエル内部ハウリングはシエル内へ近接して各種の小さい部品を封入
するために発生したトラブルで、6件のうち4件はシエル再製作が必要で
あった。
利得調整器の故障は2件であったが強く回転しすぎたための破損ではなく、
ツマミの外れであった。フェイスプレートの外れは1件、認められた。

3.装用上のトラブル (10件)
耳介外耳道入口部の形態を十分に考慮し耳型の採取を行っても、実際に補
聴器を装着してはじめて判明するトラブルである。シエルがきつい3件、
痛い1件、外しにくい2件の計6件はシエルの削減、切断を行った。シエ
ルの外れやすい4件はシエル再製作を行った。指で操作が困難な位置角度
に利得調整器が設置されており、再製作しなければならない例はなかった。
これらのトラブルは補聴器製作過程での仮合わせによってある程度解決で
きると考えられる。

4.実用上のトラブル (3件)
カナル形補聴器を装用することにより目的とした補聴効果が得られたにも
かかわらず、自分の声がひびいたり、こもって聞こえ、補聴器を装用しに
くい例が3件あった。我々の施設では耳型採取の際に印象剤を外耳道に挿
入し耳声音を発声させて、自分の声が強くひびくと訴える症例には可能な
限り太いベント管の製作を指示している。2件はベント穴を変更し太くす
ることにやって対処できた。しかしハウリングを起さない限度で可能な限
り太いベント管の製作をしてもなお自分の声がひびくと訴えた例はシエル
とベント穴の最製作が必要であった。

( まとめ )
カナル形補聴器を処方した322耳の追跡調査で28件のトラブルが認め
られた。前回の調査で209耳に対して95件であったのに比較すると、
トラブルの割合は大幅に減少した。最も減少したトラブルは導音管類の目
づまりであった。前回トラブルの46.3%を占めてきた目づまりは入口
部にフィルターを設置することより完全に防止することができた。耳介外
耳入口部の形態を十分に考慮し耳型の採取を行っても、実際に補聴器を装
着してはじめて判明するトラブルの件数は減少しなかった。自分の声がひ
びいたり、こもって聞こえ、補聴器を装用しにくいというトラブルはベン
ト管を太くするによって対処した。

表  トラブルの件数
項目 前回 今回
1 特性上のトラブル 9 6
2 構造上のトラブル 64 9
目づまり (44) (0)
シェル内部ハウリング (10) (6)
電池ボックス (4) (0)
利得調整機 (3) (2)
破損等 (3) (1)
3 装用上のトラブル 13 10
シェル変更 (13) (10)
4 実用上のトラブル 9 3
ベント変更 (9) (2)
シェル変更 (0) (1)
合計 95/209 28/322