補聴器処方の問題点
友森操・杉原三郎・槙野博規(山陰労災病院)・
福元儀智(中国補聴器センター)
 
( はじめに )
われわれの施設では補聴器処方に際して、ダイナミックレンジを測定し
十分な増幅度を持たせるとともに、補聴器の最大出力が不快値を超えな
いよう心掛けているが、それでも聴えに関する不満の対処に苦慮する場
合が少なくない。今回一人の患者に補聴器をフィッティングする機会が
あったが、この患者を通して補聴器処方の難しさといくつかの問題点を
感じたので、改めてこの問題を検討した。

( 症例 )
40歳・女性、主婦。右耳は幼少期より聾である。同じ頃から左耳の難
聴があったが補聴器は装用していなかった。しかし読話を主体とする会
話では不自由なため、6年前から耳かけ補聴器の装用を始めた。ところ
がこの補聴器を使用する際、少しでも大きめの音が入るとうるさく感じ、
外出時はもちろん、よほど重要な会話以外の時は補聴器を装用していて
もスイッチを切った状態であった。裸耳では電話のベルの音もわからな
いため、もう少し聴こえが良くならないかと平成2年6月4日当科を受
診した。

( 結果・考案 )
この患者は補聴器を使用したいと考えているが日常生活のほとんどの場
面で音がうるさく感じるため、補聴器を耳につけていながらスイッチを
切っている状態であり、会話も読話であった。また定期的に補聴器販売
店で器械のチェックは受けていたが、聴えの質に対する不満の相談をし
たことがなかった。
聴力検査の結果、耳掛け形補聴器の最大出力が不快値を超えていること
と、ダイナミックレンジが非常に狭いことが判明した(図1,2,3,
4)。そこでこの補聴器の最大出力制限装置を調整したが、最大限絞り
込んでもなを不快を訴えた。
結局この耳掛け形系補聴器の装用をあきらめ、患者本人の希望もありカ
ナル形補聴器を作製した(図5,6)。カナル形補聴器では、前の耳掛
け形補聴器に比較して大きな音が不快でなくなり語音の聴き取りの改善
が認められた反面、音量感が不足するために利得調整器を大きくしがち
となり、ハウリングが起こりやすくなった。また高音の特性がよくなっ
たためか、音がキンキンするとの訴えもあった。ベント穴を閉鎖するこ
とによってこれらの不満の大部分は解消したが、このカナル形補聴器は
装用してまだ間もないため、患者の訴えを繰り返し聞きながら現在も調
整を進めている。

( まとめ )
補聴器を処方する際、聴力検査の結果ダイナミックレンジが狭い症例に
ついては、メーカー・ディーラーに適切な指示をするとともに、十分な
after careを行う必要がある。メーカー・ディーラーは定期点検の際、
補聴器性能のみでなく聴こえの質にたいする不満の訴えもチェックする
必要がある。