改良型骨導補聴器の製作
杉原三郎・友森操(山陰労災病院)・
福元儀智〔中国補聴器センター〕
 
[ はじめに ]
骨導補聴器は側頭骨に振動端子を圧着使用することにより、外耳道、
鼓膜、耳小骨などの伝音系を介さずに
直接蝸牛に音刺激を与えることができる。それゆえに外耳道閉鎖例
や中耳根本手術例など通常の補聴器(箱形、耳掛け形、メガネ形、
挿耳形)が使用しにくい症例をはじめ、一般的な伝音性難聴例、耳
漏がある症例、外耳道を閉鎖するのを嫌う症例などに使用されてい
る。しかし現在のところ骨導補聴器には箱形補聴器にコードで延長
した振動端子を利用するタイプ(ヘッドバンド形骨導補聴器と称す
る)と、メガネの柄に振動端子を組み込んだタイプ(メガネ形骨導
補聴器と称する)の2種類しかない。今回通常の補聴器はもちろん
骨導補聴器も使用しにくい2症例を経験し、それらに適合する骨導
補聴器を試作したので、その概要を報告する。

[ 対象 ]
症例1:43歳、男性、医療従事者。左耳は真珠腫性中耳炎のため
昭和33年に中耳根本手術を行った。右耳は癒着性中耳炎で伝音性
難聴がある。最近10年間に右耳中低音域の聴力悪化が認められ仕
事中に補聴器を使用したが、補聴効果は良いものの装着時に次のよ
うな不満があった。
耳掛け形、挿耳形補聴器;外耳道を閉鎖すると耳が痒くなる。
ヘッドバンド形骨導補聴器;コードが邪魔になる。
脱着が面倒である。
メガネ形骨導補聴器;メガネを使用していないので使いたくないし、
装着するとうっとうしい。
症例2:50歳、女性、主婦。左耳は真珠腫性中耳炎のため昭和2
9年に中耳根本手術を行ったが、真珠腫再発、顔面神経麻痺、メマ
イ・疼孔現象のため昭和62年再手術を行った。右耳も真珠腫性中
耳炎のため同時期に中耳根本手術を行った。混合性難聴がある。両
耳とも外耳道を広く形成してあり、イアモルドを介して通常の補聴
器を使用できないため現在はヘッドバンド形とメガネ形骨導補聴器
を使用しているが、補聴効果は良いものの装着時に次のような不満
があった。
メガネ形骨導補聴器;美容上使用したくないし、装着するとうっと
うしい。振動端子が側頭部の同じ位置に当たるため痛い。レンズの
フレームで視野が邪魔されるとフラフラ感が増強し、つまづいたり
自転車に乗りにくい。
ヘッドバンド形骨導補聴器;コードが邪魔になる。美容上も少し気
になる。脱着が面倒である。

[ 結果 ]
2症例の装着上の不満を解消するために、骨導形でしかも本体と振
動端子が一体となり美容上も満足できるような補聴器を試作した。
市販の女性用ヘアバンドと骨導振動端子を利用したタイプ(写真1)
とメガネ形骨導補聴器の柄を改造利用してヘアバンドに取り付けた
タイプである。後者は一側用と両側用を試作した(写真2,3)。

補聴効果
音場における裸耳聴力とこれらの補聴器の装用域値を図1,2に示
す。装用域値はボリウムによって変動するが、実用上十分な増幅度
が得られた。

装用の印象
美容上は満足である。女性が装着すれば全く目立たない。脱着が容
易である。
外耳道を閉鎖しないので蒸れない。痒くならない。仕事中すぐ装着
できるし、不要の時はすぐ外せて首に掛けておける。メガネ形骨導
補聴器に比べ、側頭骨に骨導端子の当たる位置を少しずらすことが
できるので痛みが少ない。
ヘッドバンド形骨導補聴器は一側にしか骨導端子がないが、本器
(写真3)は両側にあり方向感がわかる。
補聴効果は使用中の補聴器と変わらない。

[ まとめ ]
現在補聴器は種々の形のものが市販されており、オーダーメイドの
ものを含め聴力障害で悩む患者のほとんどに対処できる。
しかし、本症例は現行の補聴器では不満を解消できなかったので、
今回の試みを行った。
この試みが患者のQuality of lifeの向上、補聴器fittingの発展
につながれば幸である。