UCLを指標した補聴器フィッティング
大沢広秀(松江市立病院耳鼻咽喉科)・藤原敏浩( 同 )
福元儀智(中国補聴器センター)・門脇睦夫( 同 )〕
 
【 はじめに 】
補聴器フィッティングを施行してみると、うるささや音量不足などで
フィッティング困難な症例が時々みうけられる。ところがSPLメータにて
快適レベル(MCL)、不快レベル(UCL)を指標としてフィティングを
行うと容易にフィティングが可能であり、その有用性が示唆される。
このような症例は特定周波数において極度にダイナミックレンジが狭
く、純音聴力検査よりは推測できないものである。
今回このような症例について報告する。

【 対象と方法 】
22歳から70歳までの5症例で、補聴器歴4年であるが満足できて
ない3症例と、フィッティング不満で未装用の2症例である。
域値、MCL、UCL測定にはSPLメータ(DANAC 35H)を使用し、イヤホン
を用いた。なお装用域値測定にはスピーカーを使用した。入出力曲線
測定には補聴器特性測定装置(FONIX6500)を使用した。

【 結果 】
症例1:63歳。女性。補聴器歴4年。オージオグラム(図1)。SP
Lグラフ(図2)。高音域のUCLが急速に低下しているため、最初の設
定(図3)ではMOP最大でもUCLを超えるためひびきあり。 MOPを改良
し(図4)を適合する。
症例2:65歳。女性。補聴器歴4年。オージオグラム(図5)。SP
Lグラフ(図6)。入出力曲線(図7)。 SPLメータの測定では高音域の
域値が急激に低下するため高音域をおさえ適合。
症例3:22歳。女性。未装用。オージオグラム(図8)。 SPLグラ
フ(図9)。入出力曲線(図10)。高音域でのMCL、UCLが低いため、
高音域を絞り込んだ特性のプログラミング3ch耳掛形にて適合。
症例4:69歳。女性。未装用。聴力レベルは中等度であるが、ダイ
ナミックレンジが狭く適合不能といわれ未装用。 UCLを超えないよう
に設定して適合。
症例5:70歳。男性。補聴器歴4年。SPLグラフ(図11)。 入出
力曲線(図12)。 音量の不足感あり。域値は中等度で装用域値も
良好であるが、MCL、UCLが非常に大きいため、70dB入力でもMCLを
越えていない。更に出力を大きく設定したもので適合する。

【 考察 】
同じ聴力レベルでも個々の症例においてそれぞれのきこえがあり、補
聴器の選定、調整には純音聴力検査のみでは推定できないMCL、UCLを
考慮する必要がある。また補聴器はヘッドホンとは異なる耳せん、イ
ヤモールドを挿入した状態であり、域値、MCL、UCLの測定はSPLメータに
よる測定値のほうがより近いものと推測される。