イヤホン・イヤモールド一体型補聴器の試作
杉原三郎・友森操(山陰労災病院)・
福元儀智(中国補聴器センター)
 
[ はじめに ]
耳介奇形や外耳道狭小例においては、イヤモールドを介した外装イヤ
ホンの装着に困難な場合もある。耳介奇形や外耳道狭小例のみならず、
乳児や発育障害のある幼少児の場合にも、イヤホンの大きさと重さに
よって耳介・外耳道から外れることをよく経験する。
症例に応じて粘着テープを使用したり、特殊なイヤモールドを作製し
て工夫しているが、家族や周囲にとっては脱着・保守・取扱いが面倒
な場合が多い。
今回このような症例に対してイヤホンの形状や重さで外れにくいよう
に、イヤモールド内に耳掛け形補聴器の内装イヤホンを組み込んで
(シエル型イヤホンと称す)小型化をはかった補聴器の試作を行った
ので、その概要を報告する。

[ 対象 ]
初診時11ヶ月、男児。
早産、極小未熟児(1274g)。6ヶ月の頃、呼びかけに反応がな
いとのことでABRを施行され、高度難聴を疑われて平成7年3月23日当
科紹介となった。
CT:中内耳に奇形なし。耳甲介腔は浅く耳輪は柔らかで、外耳道は狭
小であった。
幼児聴力検査では約60dB水平型の検査結果(図1)が得られた。

[ 結果 ]
平成7年5月にこの結果をもとにして補聴器装着の準備を始めたが、
通常のイヤモールド・イヤホンでは耳介への固定に無理があると判断
されたため、以下のような構造の補聴器を試作した。
耳掛け形補聴器(フィリップス S−41)の内装イヤホンを、採取した耳
型から作製したシエル内に組み込んだ。補聴器本体からシエル型イヤ
ホンまでは延長コードを使用し、いわゆるベビー形補聴器として使用
した。(図a,b)。
耳に装着するシエル型イヤホンは通常のイヤモールド・外装イヤホン
より大きさ、重さともかなり減少させることができた(図3)。コー
ドを引っ張らないかぎり落ちないし、脱着も容易であった。
本器の音場での補聴器装用域値を図4に示す。
本器の周波数特性を図5に示す。

[ 考案 ]
耳介奇形や外耳道狭小例のみならず乳児や発育障害のある幼少児の場
合に、補聴器のイヤモールド固定に苦労する経験を誰もが持っている
はずである。本症例は中等度の難聴であり耳掛け形補聴器を使用する
ことができたが、高度難聴で耳掛け形補聴器では性能的に不充分な場
合、箱型補聴器と従来通りイヤモールドを介した外装イヤホンを何等
かの工夫を行って装着する必要がある。更に外耳道が狭い症例には挿
耳形補聴器の内装イヤホンを使用して更に小型のシエル型イヤホンを
作製することもできるが、限界もある。
試作器の周波数特性は、耳掛け形補聴器の導音管の影響と考えられる
ピークが滑らかになるのが認められた。試作器には本体とシエル型イ
ヤホンの接続コードの保守などの問題があるが、今後、改良していく
予定である。